お客様に心から喜んでもらえるサービスの提供は、仕事においてとても大切なことだ。
しかし、それを実現するために単に商品やサービスを販売するだけの時代はもう終わった。
これからはより一層、お客様が満足する心地よい体験の提供が条件となる。
今回は『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』と、そして筆者の考えを元に、仕事のマンネリから脱して最高のサービスを提供するためのいくつかのスキルを紹介したい。

とくに「あなたは芸術家タイプの人間です」と診断されたことのある方。
芸術に関する会社がほとんどなく「自分は社会に向いていないんだ…」とショックかもしれないが、落ち込むのはまだ早い。
あなたの人とは違った考え方は、これから多くの場面で重宝されるのではないかと筆者は考えている。
「お客様に喜ばれるサービス」を実行するのに必要なこと3つ
お客様に喜ばれ、そして売上につなげるためには、実に多くのスキルが必要だ。
しかしながら、その中でも「アート思考」と呼ばれるものはとても重要だと筆者は考える。
今回は、その「アート思考」も含めた下記3点について解説していきたい。
- 目の前の仕事に対する「常識」を疑うこと
- 「どうしたら喜んでもらえるか?」を考え、新しいアイデアを出すこと
- アイデアを形にすること(行動すること)
もちろん、本物のアーティストのように絵画や彫刻、ダンスができないとダメ!ということではない。
一流アーティストのような「思考」を育むこと。ここがポイントとなる。
目の前の仕事に対する「常識」を疑うこと
我々は知らず知らずのうちに、常識にとらわれていますが、アーティストはそれらを軽々と乗り越えていきます。
ビジネスにおけるイノベーションもまた、そのような「常識からの逸脱行為」によって生まれてくるものではないでしょうか。
『アート思考』秋元雄史著,プレジデント社,p24,(2019年)
私たちは、目の前の仕事を「当たり前のこと」としてこなしている。
それは当然のことだ。これまでそうやって仕事が進んできたわけだし、今さらやり方を変えるなんて面倒極まりない。
しかし、それではいつまでたっても最高のサービスにならないのも事実だ。
また、今は最高のサービスができていたとしても、それ以上のレベルにならないことは覚えておいたほうがいいだろう。
「なぜ、このエクセルファイルで集計しているのだろう?」
「なぜ、この作業が必要なんだろう?」
「なぜ、この会社はこういう理念を掲げているのだろう?」
どんな仕事内容(たとえ事務作業でも)も、果ては会社の考え方も、「なぜ〇〇なのか?」と考えるクセをつけておきたい。
ちなみに、この重要性は『Q思考』という書籍でも語られている。
成功しているビジネスリーダーの多くは、専門家と言えるほどの卓越した質問家だというのだ。彼らは、当たり前のように業界の既成概念、自社の習慣、さらには自分自身が定めた前提条件の有効性にさえ疑問を抱く。
『Q思考』ウォーレン・バーガー著,鈴木立哉訳,ダイヤモンド社,p8,(2016年)

最初は変な違和感を抱くだろう。筆者もそうだ。
「やり方にケチつけるのは…」と、今までの手順が世界で一番優れているかのように感じても無理はない。日本人とはそんなものだ。
だが、それで思考を止めてしまうのは非常にもったいない気もする。
今までの在り方に対して疑問を持つこと、常識を疑うことは、大なり小なり仕事を「イノベーション」させるには必要不可欠。
常に「なぜ?」という視点を持つ性格は大切にしていきたい。
「どうしたら喜んでもらえるか?」を考え、新しいアイデアを出すこと
既存の仕事について「なぜ?」と疑問を持つことができたら、それに対する最適解を見つけるステップに入ってみよう。
この点は、芸術家タイプの人にとって得意分野と言えるのではないだろうか?
筆者もそうだが、芸術家タイプは『さあ、才能に目覚めよう ストレングス・ファインダー』で言うところの「最上志向」や「未来志向」の資質を持っている方が多いのではないかと思っている。

「こんなことができたらもっと喜んでもらえそう」という仕事のアイデアを思い浮かべることは、アート思考を持った芸術家タイプには比較的かんたんに思える。
何かアイデアが出てきたら、すぐにメモに残してみよう。
ただし、注意しておきたいのは、アイデアはあくまでアイデアであるということだ。
『シュンペーター』という書籍でも少し触れられていたが、大事なことはそのアイデアを実現させ、スケールさせることだ。
最終的には、次で述べる「行動」につなげていくことは意識しておきたい。
なぜイノベーションは難しいのでしょうか?
それはアイディアが不足しているからではありません。アイディアだけなら、常識にとらわれない「よそ者、わか者、ばか者」に聞くのが一番です。アイディアなんて、コモディティ(ゴミ)なのです。
『シュンペーター』名和高司著,日経BP,p114,(2022年)

さて『シュンペーター』では「新しい市場を作ること(マーケットアウト)」も大切だと述べられており、それは一職場にしてみれば、お客様に対して新しいサービスを考えるということでもある。
そして新しいサービスを生み出すには、お客様が本当に欲しがっているものの推測が欠かせない。
このあたりは大手外資企業であるキーエンスの考え方が参考になる。リンクの先のYouTubeも眺めてみてはいかがだろうか。
ただし、中小企業につとめる私たちがキーエンスの手法を容易く扱うのは難しそうだ。
一流企業の社員たちとはまるで思考回路が違うだろうから、すぐに結果を出すことは到底できそうにない。
であれば、『読みたいことを書けばいい』や『自分がほしいものだけ創る!』といった書籍が述べているように、自分をお客様の立場におくところから始めるのもありだ。

「自分がお客様だったら、どんなサービスがほしいだろうか?」
そう自問自答しながら、アイデアを形にしてみよう。
アイデアを実践すること(行動する)
今の仕事内容に疑問を持ち、さらに良質なサービスを提供するためのアイデアを形にする。
これらができたら(たとえ50点な内容だとしても)、あとは実践してみることだ。
実際にお客様にサービスを行い、そのフィードバックを得よう。
行動するとなると、どうしても躊躇してしまうときもあるだろう。
「こんなことして、なんかバカみたい…」
「今までのやり方のほうが効果があるんじゃないかな…」
そう思ってしまうのも無理はない。
ただそれでも、たとえ前例がなかったとしても、やる価値は十分にあるはずだ。
IPS細胞を見つけた山中伸弥教授も参考にした『仕事は楽しいかね?』という書籍の内容を引用しよう。
これは僕の大好きな言葉の1つなんだ。
“遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る”
『仕事は楽しいかね?』デイル・ドーテン著,野津智子訳,きこ書房,p45,(2001年)

これまでの会社のように、堅苦しく身構えて結果が出ないのであれば、もっと肩の力を抜いて「とりあえずやってみよう」の精神で行動することも必要だ。
もちろん計画や改善は必要だと思うけれど、100%準備ができてからじゃないとダメ!という考え方ではどんどん時代に取り残されてしまう。
少しずつでもいいからフットワークを軽くして行動するようにしていこう。
アート思考でお客様に喜んでもらえるサービスを
書籍『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』
そして、筆者の思考や経験をもとに、お客様が心から喜ぶサービスをするために必要なスキル、そして芸術家タイプの人が秘めているスキルを述べてきた。
筆者もまだまだ勉強不足・経験不足だから、自分の中にある「アート思考」をフル活用できるよう、毎日の生活を大切にしていきたいと考えている。
読者のみなさんはどうだろうか?ぜひこの記事に対する感想や意見を下のコメント欄に入力していただければ幸いだ。
それではこの辺で。
今回紹介した本たちに興味を持ったらこちらからどうぞ↓
1)『アート思考』秋元雄史著,プレジデント社,(2019年)
2『Q思考』ウォーレン・バーガー著,鈴木立哉訳,ダイヤモンド社,(2016年)
3)『さあ、才能に目覚めよう 新版』トム・ラス著,古屋博子訳,日本経済新聞出版社,(2017年)
4)『シュンペーター』名和高司著,日経BP,(2022年)
5)『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延著,ダイヤモンド社,(2019年)
6)『自分が欲しいものだけ創る!』野崎亙著,日経BP,(2019年)
7)『仕事は楽しいかね?』デイル・ドーテン著,野津智子訳,きこ書房,(2001年)
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